Gentle rain
廊下の向こう側で振り向いたのは、紛れもなく夏目の妹。

彼女だった。

「あの、私……」

とても困った表情を見せる彼女。

「バイトが長引いてしまって、階堂さんはもう待ってはいないと思ったのに…」

オロオロと、言い訳を始める彼女。

「でも、私が来るまで待ってるって、階堂さんが言ってくれたから…私……」

来るべきなのか、それとも無視するべきなのか、迷った時に彼女が信じたのは、俺の何気ない一言だったのかと思うと、俺の足は自然に、彼女へと近づいていた。

「いいんだ。来てくれたんだから。」


そっと、彼女の頬に触れた。

柔らかくて、白い肌。

俺の手が触れた先から、溶けていきそうだ。

「階堂さん。」

彼女の声が、俺を現実に引き戻す。

「……ごめん。」

「いいえ。」
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