同居人は無口でクールな彼
「鈴香ちゃん、もうすぐあの子も帰ってくるだろうから、お昼にしようと思うんだけど、片づけは終わりそう?」
「あ、すみません。準備のお手伝いすればよかったのに」
「それはいいの。私の仕事だから。鈴香ちゃんはたくさんモリモリ食べるのがお仕事ね」
どこまでも優しいおばさんの後に続いて1階に下りていくと、ちょうど玄関の方で音がした。
「あ、ちょうどあの子が帰ってきたみたいね」
やっと会えるんだと思ったら、わくわくしてきて。
おばさんが「おかえり」と言う後ろで、わたしはそわそわしていた。
すると――
「ん」
という、短い声が返ってくる。
ただ、その声があまりにも低くて、驚いてしまった。
「ちょっと、翔哉!ただいまの挨拶はしなさいっていつも言ってるでしょ」
「……ただいま」
しかもおばさんが“翔哉”と呼んだことにも驚きを隠せない。