同居人は無口でクールな彼
「なに、あのお弁当」
「まさか篠原に持っていくの?」
「え、あの2人デキてんの?」
「キモ。あいつ、篠原のこと好きなの?」」
次から次へと聞こえてくる声に、気づいたら呼吸をするのを忘れていた。
ここで違うと声を上げても、きっと誰も聞いてはくれない。
いつもそうだった。
学校で、わたしの言葉は誰も聞いてはくれない。
バカにする声が聞こえないように、耳にそっとふたをして、わたしは急いで彼を追いかけた。
もしかしたら、購買でお昼を買いに行こうとしているんじゃないかと思って。
「あの……っ」
後ろから声をかけると、不機嫌そうな篠原くんが振り返る。
「あの、えっと……」
廊下にはほかのクラスの生徒が数人いて、わたしをちらちらと見ている気がした。
「話しかけんなよ」
お弁当のことを伝えようとしたら、彼はそれだけ告げて、大股でズンズン先を行ってしまった。