同居人は無口でクールな彼
違う……違うの……
わたしはただ、お弁当を渡そうとしただけ。
これだけのことが、どうしてうまくできないんだろう。
情けなくて、また泣きたくなった。
「鈴香ちゃん、どうしたの?」
家に帰ると、優しいおばさんにすべてを説明しなければいけなかった。
そのことに憂鬱になっていると、先におばさんから心配をされてしまって、さらに情けなくなる。
「あの……ごめんなさい」
ただ謝るしかできなかった。
「突然どうしたの?鈴香ちゃん」
「実は、篠原くんにお弁当渡せなくて」
せっかく作ってくれたお弁当を無駄にしてしまった。
そのことが申し訳なくて、仕方がなかった。
「いいのよ、鈴香ちゃん。鈴香ちゃんのせいじゃないわ。もとはと言えば、忘れていった翔哉が悪いんだから。鈴香ちゃんが気にすることじゃないのよ」