同居人は無口でクールな彼
いつも不機嫌な彼に自分から話しかけるのは、とても勇気がいることだった。
だから、なかなか次の言葉が出てこなくて、篠原くんがイライラし始めたのがわかる。
「用がないなら行くけど」
なかなか話し始めないわたしに、吐き捨てるような言葉。
彼が靴箱に手をかけたとき、わたしはとっさきに声を出していた。
「篠原くん!あの……!」
わたしの声が、篠原くんの手を止めた。
そして、呆れたような眼の彼がわたしをとらえる。
「なに?」
わたしを急かすその声が、鼓動を加速させた。
「えっと、あの、昨日のことなんだけど」
そっと彼を見上げると、威圧的にわたしを見下ろしていた。
「昨日はごめんなさい!」
わたしが謝った瞬間、彼の瞳が大きく開く。
そして、上げていた手をそっと下した。
「昨日、お弁当渡そうと思ったんだけど。声もかけようと思って追いかけたんだけど、結局渡せなくて」