【コミカライズ】私の運命は、黙って愛を語る困った人で目が離せない。~もふもふな雪豹騎士にまっしぐらに溺愛されました〜
 ティタニアが静かに足音を忍ばせながら玄関ホールにまで螺旋階段を降りたところで、ユージンの訝しげな声がした。

「ティタニア様……? こんな時間にどちらに? 何か、問題がありましたか」

 離れた場所から慌てて駆け寄って来た様子の可愛らしい顔を持つ彼は、ティタニアの旅装に驚いているようだ。けれど、流石というべきか貴族令嬢に対する礼儀は決して崩さない。

 他でもないユージンに見つかり本来であれば焦るだろう場面なのに、頭の中は自分でも驚くくらい、落ち着き冴えていた。

 ゆっくりと向き直り、背の高い彼の水色の目を真っ直ぐに見上げた。

「ごめんなさい。父の体調が悪いみたいなの。一度帰って来るわ。またすぐに戻ってくるから」

 にこっと微笑んだティタニアを見て、ユージンは出立する事情を理解しほっとした様子で頷いた。

「そうなんですか。大変ですね。お父様が早く良くなられることを、祈っています。スノウはどうしたんですか? ティタニア様が一度帰られるなら……」

 首を傾げたユージンは不思議そうだ。確かにこれまでの事を考えれば、スノウが今ここにいないのはおかしいだろう。あんなに片時もティタニアの傍を離れたくないと、そう何度も言っていたのに。

 今ではもう失ってしまったものを、振り切るようにティタニアは精一杯微笑んだ。

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