旦那様は征服者~慎神編~
「え?そんなつもりは……」

「お前は…本当に……無能なんだな…」
ズンッと慎神の雰囲気が、闇に落ちた。

「しゃ、社長……」
「やっぱり、お前…いらない!
奏瑪!あとは、頼むね!」
慎神は、奏瑪の頭をポンポンと撫でた。

「はい、かしこまりました」
丁寧に頭を下げる。
慎神がエレベーターに向かい、乗り込んだのを確認して専務に向き直った。
「………奏瑪さん!お願いします!クビだけは……」

「じゃあ、どうする?」

「え?」
「だから!クビが嫌なんだろ?
じゃあ、どうしたい?」
「そ、それは……」
「それも答えられないのか?
ほんっと、無能なんだな……なんで、お前が専務になり得たのかわからない」
「………せめて、依願退職で…」
「ん。わかった。じゃあ今日中に書いて、ちょうだい」

そう言って、奏瑪もエレベーターに向かう。
そして乗り込む寸前に振り返り、言った。

「あんた、無能みたいだから言っとく。
もう…二度と慎神様には関わらない方がいい。
あの方に勝てる人間は、もう…この世にいない。
わかるよね?」

そして乗り込んだ。

一方の莉杏━━━━━━━━━
「んー、慎神くんってどんな女性が好みなのかな?」
婚活パーティーの時の慎神を思い出してみる。
どの人も、スタイルが良く綺麗な人ばかりだった。

「私には、無理じゃん!!」
莉杏は小柄で、実は胴長短足……
それが、コンプレックスでもあるのだ。

「何か、せめて可愛いって言ってもらえる服を……」
色々着ては、脱ぎ、着ては、脱ぎを繰り返す。

「ん?あ…これ……」
段ボールの奥にしまい込まれていたワンピースを見つける。
大学生の時に買ったワンピースだ。
しかし、一度しか着ていない。
それは当時付き合っていた彼に“似合わない”と一喝されたから。

なんとなく、着てみる。
「意外に着れた……
うーん、私は可愛いと思ったんだけどなぁー」

鏡の前で、くるくる回っているとスマホが震えた。

「あ!慎神くん!
…………もしもし?」
『莉杏ー寂しいよー』
「慎神くん、お疲れ様!」
『莉杏、今何してたの?』
「え?あ、一人ファッションショーを…/////」
『何それ(笑)?可愛い~』
「デートに着ていく服をひたすら選んでたの。
………あ、せっかくだから聞いてもいいかな?」
『ん?何?』
「慎神くんは、どんな服が好き?」
『莉杏が着る服なら、何でも好き!!』
「え?そ、そう?」
『うん!あ、でも!』
「ん?」
『あんまり、露出が多いのはやだなぁ』
「大丈夫だよ!どうせ似合わないし、そもそも持ってない」
『フフ…でも楽しみだなぁ!』
< 10 / 40 >

この作品をシェア

pagetop