旦那様は征服者~慎神編~
莉杏は、あのワンピース姿で慎神が帰ってくるのを待っていた。

【お前さぁーそれ、似合わねぇ…(笑)
なんか、お前が俺の彼女なんて恥ずかしいー(笑)】
と、バカにされた。

「ど、どうしよう…やっぱ、着替えた方がいいかな?」
悩んでいると、慎神からスマホにメッセージが入った。

『莉杏、もうすぐ着くよ!玄関まで来てて!』
『慎神くん、お仕事お疲れ様☆わかった、玄関で待ってます!』

「ダメだ!今から着替えてたら、慎神くんが帰ってくる」
莉杏は一度気合いを入れ、玄関に向かったのだった。

慎神が帰り着き、玄関を開けた。
「莉杏、ただいま!」
「し、慎神くん、お帰りなさい。お仕事、お疲れ様」
莉杏は、慎神と目線を合わせられないまま迎える。

「莉杏…」
「あ、あの…ど、どうかな?
やっぱ、似合わないかな…?」
恐る恐る、声をかける莉杏。

「可愛い…そのワンピ、見たことない。まさか、今日買って来たなんてことないよね?」
「え?違うよ!段ボールの奥にしまい込んでたの忘れてて……慎神くんに黙って、外に出たりしてないよ」
「良かった!
それにしても、可愛いよ!凄く可愛い!」
「ありがとう!良かった!」
「でもこんな可愛いの、なんで今までしまい込んでたの?」
「あ、それは!元カ……いや、前にある人に“似合わない”って言われてショックで……それから、着てなかったの」

「そうだったんだ…その人、センスないんだね!
こんなに可愛いのに…!
どうしよう…このまま、外に出たくない!
こんな可愛い莉杏を誰にも見せたくない!」

腕の中に閉じ込めるように抱き締めた、慎神。
腕の隙間から、莉杏の頬やこめかみにキスをした。

「ん…くすぐった…いよ…」
少し身をよじる、莉杏。
「可愛い…
でも約束したし、行こうか?
ほら、ピアスも買ってあげたいし!」
耳に、チュッとキスをした慎神。
莉杏に向き合って、微笑んだ。

「もう大丈夫かな?」
「うん。
ピアスホール、綺麗になってるみたいだし!」

実は付き合ってすぐの頃、莉杏は慎神にピアッシングをしてもらっていた。

「でもあの時、可愛かったなぁ!」
車に乗り込んだ慎神が、ピアッシングした時のことを思い出し微笑んだ。


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慎神の服を握りしめ、目を力強く瞑る莉杏。

「いくよ!」
「………」
莉杏の右耳に、ピアッサーを当てた。
「開けるよ!」
「あ…待ってください!!ちょっと待って!」
「莉杏?大丈夫だよ!」
「はい…ごめんなさい!自分が、開けたいって言ったのに………」

「ううん!ちょっと、深呼吸しようか?」
「はい…ふぅー
ずっと、憧れてて…でも自分でなんて怖くてできなかったので、これを機会にと思って!」
慎神の左耳の、耳たぶと軟骨のピアスを見ていった。


「莉杏、次こそはいくよ!
じゃあ、開けるよ!」
再度ピアッサーを当てる、慎神。
「はい!」
再度、慎神の服を握りしめて目を瞑った。

「んんっ!!?」

「よし、開いたよ!」
「………」
莉杏は慎神の服を握りしめたまま、しがみついていた。
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