偽装夫婦のはずが、ホテル御曹司は溺愛の手を緩めない
響一を心配させるつもりはない。あかりの個人的な悩みに彼を引き込むわけにはいかない。だからちゃんと大丈夫だと伝えて笑わなければならない。
あかりの言葉に、響一がそうかと短く頷く。上手くごまかせたことにホッと安堵しつつ、思考はここ数日の悩みに舞い戻る。
(私やっぱり……響一さんのこと……)
素直に認めてしまえば、答えは至ってシンプルだった。最初はただの契約結婚のつもりだったのに、入谷家の御曹司である響一との結婚は無謀だと思っていたのに、彼の申し出は丁重に断ろうと思っていたのに――結局は彼に惹かれていた。いつの間にか好きになっていた。
理由なんて大層なものではない。
偶然が重なって、ただのサロン店員であるあかりを見つけてくれて、選んでくれて。契約による仮初めだが結婚を提案されて。ひとつ屋根の下で共同生活を営んで、プライベートの時間を一緒に過ごして、自分にだけ無防備な姿を見せてくれて。
そうこうしているうちに響一のことを好きになってしまっていた。共に過ごすうちに惹かれてしまった。
はじめの頃はまったく想定していなかった感情に、自分でも驚くばかりだ。