偽装夫婦のはずが、ホテル御曹司は溺愛の手を緩めない

「勘違いですよ……?」
「……本当か?」

 あかりが電話をしたりメールで連絡を取っているのは、響一が想像するような相手ではない。

 その証拠として最近の通話履歴や求人案内のメールを見せると、彼もようやく状況を理解して受け入れてくれたらしい。はああぁ、と盛大なため息をついてあかりの肩の上に頭を乗せるので、あかりもほっと息を吐いた。

「良かった……本気で焦っただろ」
「良くないですよ。私、浮気を疑われたんですよ?」

 良くない。全然良くない。
 あかりは存在もしない浮気相手を作られ、勝手にその人と逢瀬をしていることにされ、一方的に嫉妬の感情をぶつけられたのだ。響一の本気の怒りに泣くほど驚いたのに、ごめんの一言では済まされない。

「仕方ないだろ。こそこそ誰かと連絡取って、俺が近付くといつも隠すから、他に好きな男が出来たと思ったんだんだよ」

 ばつが悪そうに視線を逸らす響一に、内心でそんなわけないでしょう、と思ってしまう。

 あかりに寄り添って見守ってくれる人も、あかり相手に本気になってくれる人も、あかり自身が強く惹きつけられる人も、この世には響一以外は存在しない。今のあかりが好いているのは彼だけだ。

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