大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
***

 理人は以前こちらに遊びに来た時同様レンタカーを手配していたのだけれど、せっかくだしみんなでお酒を、と言う話になってタクシーを使うことになって。


「帰りはそれでいいとして、行きはタクシー代がもったいないと思うのです……」

 日織(ひおり)がそう言って、物言いたげに修太郎を見つめたら、「ご迷惑でなければ僕が泊まり先までお迎えにあがりますよ」と、妻の意志を汲むことの出来るよくできた夫が〝自主的に〟そう提案してくれる。


 だが理人にも男としての矜持があったのだろう。

「いや、さすがにそれは申し訳ないです」

 と固辞しようとしたのだけれど。


 日織がすかさず葵咲(きさき)の手をギュッと掴んで、「そうすればお車の中でもききちゃんとお話が出来るのですっ! 私、少しでもたくさんききちゃんと一緒にいたいのですっ!」と瞳をキラキラさせて葵咲を懐柔してしまう。


「ねぇ、理人、私……」

 日織にほだされた葵咲から、おねだりするように見つめられた理人に、断るという選択肢は残されてはいなかった。

「……お手数おかけします」

 小さく吐息をつくと、理人が修太郎に頭を下げて。
 修太郎も、そんな理人の気苦労を察したように淡い笑みを返した。

 二人とも声にこそ出さなかったけれど、(お互い彼女には勝てませんよね)と苦笑しつつだったのは言うまでもない。
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