一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない

「そんなのっ。わ、私は……」
「なに?」

 離婚したい『適切な理由』をこれまで考えていたわけではなかった。

 ただ、何も考えず『ぽろり』と出てしまったのだ。そう、出てしまっただけだ。

「好きな人ができましたっ! とても頼りになって優しい人っ! ただそれだけですっ!」

 次の瞬間、私は、とんでもない理由をやけにはっきりと口にしていた。

―――出してしまった言葉を、すくってもう一度喉の奥に戻せたらいいのに……。

 そうは思っても時すでに遅し。

 【覆水盆に返らず】【後悔先に立たず】【It is no use crying spilt milk】……

 そんな言葉を並べてみても全く意味はない。

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