一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
その日は、部屋には戻らず、パーティーの開催されたホテルに宿泊することになっていた。
私は先ほどの会長の言葉や、鷹也さんの言葉を反芻して、ぼんやりしていた。
「緊張した?」
「はい……少しだけ」
私は鷹也さんに顔を背けると、窓際まで歩く。
顔を直接見られたくなかった。
私は今、どんな顔をしているか、笑っているのか泣いているのか……わからなかったからだ。
「祖父は顔も怖いし口ベタだけど、取って食われはしないから」
私はそれを聞いて絶望的に泣きたくなる。
鷹也さんに気を遣われているのが分かった気がしたから。
(これ、私へのフォローの言葉だよね……?)
そのまま後ろから抱きしめられて、首筋に唇が落ちる。
「鷹也さん」
「ん?」
「どうして、子どもができないんでしょう……私が……んっ」
そのまま後ろを向かされて、唇に口づけられる。
鷹也さんは何度も口づけて、そのまま私のドレスに手をかけた。
「んんっ……! 今日、まだ生理終わってなくて……」
「あぁ、そうか。じゃ、少しだけ」
「少しって!」
そう言って優しく上半身に手が差し込まれる。
ゆるゆると労わるように、優しく。
「俺が沙穂に触れたいんだ。もっと気持ちよくなって」
鷹也さん、あのね。
―――私は『大事な人』との子どもしか欲しくないとお伝えしたはずですよ。
私、急に不安になってきたんだ……。
あの言葉の意味が……。