一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない

 鷹也さんに相談すべきことかもしれないけど、鷹也さんに面倒をかけるのはいやだった。
 それに、もし、安曇さんがいうように、鷹也さんがやっぱり貴子さんのことがまだ好きで、私との結婚を後悔しているとしたら……

―――それを知ることこそ、私には耐えられそうになかった。


 なんだか家に帰っても落ち着かなくて、私は家の中の古い本を何冊か引き出す。
 イタリア語で書かれた古い本を開けた時、中から一枚の写真が出てきた。

 本ほど古くないそれは、カラー写真で非常に綺麗な女性が写っている。
 その裏には、ローマ字で『Takako』と書かれている。

(貴子さん……?)

 本当に、まだ思っているのだろうか……。

―――貴子さまと鷹也さんは、お二人ともお互いに思い合っておりました。きっと今も……。鷹也さんの一時の気の迷いで貴子さんと婚約破棄し、あなたと結婚され……。今はもう鷹也さんも後悔されているのではないですか? その証拠に、時間が経ってもあなたたちに子どもはできない。

 先程の安曇さんの声が頭をぐるぐる回る。
 私はその写真を見て固まっていた。
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