一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない

 私は恐怖心から目を瞑って叫ぶ。

「そ、そそそそそそんな人間とまだ夫婦ごっこを続けられますかっ……⁉」

 完全に声まで震えて動揺している。
 なのに、私とは対照的に、鷹也さんは抑揚の全くない低い声で言った。

「本気か? それで、俺と離婚したいって?」
「ほ、本気ですっ」

 鷹也さんの低い声が怖すぎて目が開けられない。
 でも、その声だけで、明らかに怒っている様子は肌からも耳からもビシバシ伝わってきて、震えて泣きそうになる。

 勝手にガタガタ震え出したのは、室内が寒いからではなかった。
 ホテルの暖房は完璧で冬なのに熱いくらい。そもそも私が室内温度を上げすぎたようだ……ごめん、地球。今度から適切な温度を守るから……! そんなことを冷静に考えようとしても結局震えは止まらない。

 だって、鷹也さんがこんなに怒ってるのも初めてで……私は混乱していたのだ。

 私が勝手に出て行ったことすら怒ってなかったのに……。
 なんでこのことだけ、そんなに怒るの⁉︎
< 8 / 108 >

この作品をシェア

pagetop