second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結


『橘クン!!!!』


ベビーをこっちに引き渡してと彼の腕があたしのほうに差し出される。

その逞しい腕、そして彼の“任せろ”と言わんばかりの表情に、あたしはこれまでずっと続いていた緊張感から解放されて泣きそうになった。

ベビーを受け取ってくれた彼はあたしの今の状況を理解してくれたのか、あたしの瞳の奥を見つめながら、こくりとひとつ頷いて、涙を流し続けている今田さんに近寄った。


「今田さん、ここまで本当によく頑張りました。ここからは僕達と一緒にお母さんとしてベビーの頑張りを支えてあげましょう。」

「・・はい・・・」

「すぐに治療を始めないといけないので、ほんの少しの時間ですが、抱っこしてあげて下さい。」


彼の言う通り、今のベビーは治療するのに1秒たりとも無駄にできない状況。
でも、彼はおそらくお母さんになった今田さんとベビーの肌と肌の触れ合いという行為も治療の一環だと考えているんだと思う。



「・・・そんなこと、今、できないと思っていました。」

「大丈夫ですよ。だから安心して抱っこしてあげて下さい。」

「・・・ありがとうございます・・・」


母とベビー、その肌と肌が触れ合う時間
とても尊いその時間だけれども、それはベビーの治療開始が遅れてしまう時間でもある

でもそれに費やした時間を取り戻すだけのスキルを橘クンは持ち備えている。
出産前から彼とコミュニケーションを取っていた今田さんもそんな彼を信じているようで、嬉しそうにベビーを受け取り、胸元に寄せて抱っこしてあげた。


「かわいい・・ほんとうに・・・」

『改めて、今田さん、おめでとうございます。』

「あ・・・ありがとうございます。生まれたんだって実感できて・・・これから一緒に頑張ろうって・・・・そう思えます・・・」


あたし達が“頑張らなきゃいけないよ”と彼女に頑張りを求める前に頑張ろうという意欲を自ら抱いた今田さん。



出生前診断において、胎児に先天性心疾患があることを告知することは、胎児の救命治療を行えるチャンスと引き換えに、妊婦さんにはただ精神的ストレスを与えるだけになるかもしれない

そんなことを考えると自分が今田さんにしたことは本当に正しかったのか?
あたしはその葛藤をずっと抱えながら今田さんの出産を迎えた


でも、

「橘先生、この子をどうか・・・どうか助けて下さい。」

「・・ええ、ベビーが無事に心臓手術を受けられるよう、全力を尽くします。」


出産前に、胎児に病気があることを知り、悩み、ちゃんと受け止めた今田さんは自ら生まれたばかりのベビーを新生児集中治療室医師である橘クンに困惑することなくベビーを託す姿を見て、あたしは正しい選択・判断をしたんだと実感できた。


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