恋と旧懐~兎な彼と私~
私はパッと慧から離れた。

え,なにしたの,なにされたの今。

今の,なに。

変な声,出たし。

なんか一瞬,変だった。

私の顔はきっと真っ赤。

人に見せられるものじゃない。

なのに,すごく視線を感じる。

今,慧,なにした?

耳たぶ唇で挟んで……



「あ,ごめん。なんか分かんないけどつい……噛んだかも」



ついってなに。 

ついですることなの?



「ちょっとどいて」

「イッた」



静かな暁くんの声と,何かを痛がる健くんの声が聞こえる。

視線を向けると,机を跨いで来たらしい暁くんが私に手を伸ばしているのと,そのために退かされたであろう健くんが見えた。

暁くんが私の腕を引いて,ぽすっと鼻先が胸板に当たる。

今度は,なんかドキドキする。

大忙しだ。
< 130 / 161 >

この作品をシェア

pagetop