鬼弁護士は私を甘やかして離さない
タクシーで咲坂先生の家に向かう時も手を離してくれず握り締められたまま。

お店から15分のところにあるマンションの前でタクシーが停まった。

降りると見上げるくらい背の高いマンションがあり、エントランスはテレビでしか見たことのないような緑が中心にあり、ソファが置かれていた。

マンションの隣にあるコンビニでお泊まりのためのグッズを買いマンションへ向かうと、コンシェルジュも常駐しているようでオートロックを解除して入るとすぐに声をかけられた。

「おかえりなさいませ、咲坂様」

「満田さん、ただいま」

そういうとエレベーターへ向かい歩き出した。
咲坂先生の手に引かれ最上階の15階へ登った。
4戸のドアしか見えず贅沢な広さであることがうかがえる。

ドアを開けると私が今まで見たことのない世界が広がっていた。
廊下を進んだ先に見える全面ガラス張りの大きな窓からは東京で1番高いタワーが見える。下を見ると車のテールランプが輝いており、これが東京の夜景なのねとテレビで見るような夜景が広がっていた。
同じ東京に住んでいてもこんな世界があったなんて母子家庭の私には想像もつかなかった。

「真衣、そこのソファに座って。ごめん、片付いてないんだけど何か飲み物出すよ。ビールでいいか?」

私がふと見回すとパジャマにしているらしきスウェットが投げてあった。それを慌てて丸め、ベッドルームへ投げ込んでいた。
シンクの中にもカップが何個も溜まっていた。

「咲坂先生もこんな面があるんですね」

そういうとフフと笑ってしまった。

「完璧な訳ないだろ。男1人だから適当だよ。来ると思ってたら掃除機くらいかけたんだけど。でもまさか今日こうやってきてくれるなんて思わなかった。嬉しいけど、でも恥ずかしいな」

「私は先生のことがより分かって嬉しいです」

「ありがとう」

頭をかきながら苦笑いを浮かべる先生がいつもの鬼とも、今まで見ていた顔とも違って私の胸はさらに高鳴った。

私をソファに座らせてくれようとするがなんとなく片付け始めた先生を横目に座ることはできず、私はシンクに溜まったカップを洗い始めた。

「ごめん、座っていいんだ。君が家に来てくれたのに汚くて申し訳ないから片付けてるだけだから気にしないでのんびりしててくれ」

「でも少しくらい手伝いますよ。そしたら2人で飲みましょう」

「あぁ。ありがとう。何かつまみでも作るよ」

「作れるんですか?」

「ま、缶詰開けたり、チーズ切ったりは……。やろうと思えばやれるけど忙しくて材料を腐らせることの方が多くてな。だから最近はめっきり外食だよ」

たしかに生活感はなさそう。全てカップで飲み物を飲むだけしかしていなさそう。こんなにすごいシステムキッチンなのにもったいない。
歴代の彼女はここで料理してたのかな。

ふとそんなことを考えると、それが顔に出たのか咲坂先生は先に口を開いた。

「ここに来たのは真衣が初めてだから。ここ何年か付き合ってないから」

「え?」

「そこ聞きたかったんだろ?顔に出てる」

当てられ恥ずかしくなった。
すると頬をするりと撫でられ、咲坂先生の色気にゾクっとした。
そしてそのままソファに座らされた。

「俺は結構前から真衣のことが気になってたから。だからここ数年はお前を見てたよ」

咲坂先生の告白にドキドキした。

「そんな素振りなかったですよね」

「ははは、まぁそうだな。俺が優しくなったらそれこそおかしいだろ?だから、まぁ、そこはさ……でも気になって仕方なかったから話しかけたくて、つい俺が直せばいいことでもお前を呼びつけてたっていうのもあるかな……」

「もう!怒られてばかりでビクビクしてたんですよ」

「ごめん。でも意地悪したくなるのも男心だろ」

「知りません!」

「ごめん」

そういうと私を抱き寄せてきた。

「ここまではいい?」

その声に私はまた胸の奥がキュッとして私も咲坂先生の背中に手を回した。
暗黙の了解に先生の力はもっと強くなり抱きしめられた。

温かい……

人の温もりってこんなだったかな。
すごく心地いい。
包み込まれてるって安心する。
ホッとするような安心感に涙がこぼれてきた。

私の目に涙が浮かんでるのを見ると咲坂先生は驚いた顔をしていた。
けど瞼にキスをしてくれ、涙を吸い取ってくれた。

「先生、温かいね」

「真衣はずっとここにいろ。俺が守ってやらから」

私の目からまた涙が溢れてきた。
強く頷くとまた先生は瞼にキスを落としてくれた。

その後、私たちはソファでくっつきながらいろんな話をした。
どれだけ話しても時間があっという間に過ぎてしまうだけで話が尽きない。

そのうちに段々と眠くなり、私は咲坂先生に寄りかかるように眠ってしまった。
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