義理の兄妹で恋をするのはフィクションの世界だけだと思っていた
「………」
気づけば…。
「ん…」
隣で寝息を立てているのんちゃんがいた。そして、スマホを手にして時間を見ると…。
「は?!」
2:00
いつの間にか深夜。状況が把握できずに頭を抱える。
「…………」
もしかして寝落ちした…?
でもなんでのんちゃんが隣にいるの…?
暖をとるように俺にくっついて眠っている。シンプルな感想を言うと『可愛い』。
じゃなくて…。
こんなにも自分を恨めしく思う日はないだろう。
気持ちよさそうに寝ているのんちゃんを起こすなんていう選択肢は毛頭なく、肩をがくりと落とした。そしてため息をついて、再びのんちゃんの寝顔を堪能する。
「………」
高校入学して同じクラスになって、親の再婚で家族になった。
兄妹としてはぎこちない距離感で拒絶ばかりされていたけれど、今はお互い好き合っている夫婦だ。
身体を重ねたことあるとか、ないとか。
そんなことよりも大事にしたくて。
「……大事にしてばっかりで………何もできなくて………ごめん…。」
ごめん。ごめんな。心の中で数回謝る。
それから…。
「………好きだよ…。」
静かな部屋に溶けていく告白。この温かい気持ちを伝える効果的な手段がキスとかセックスなら、のんちゃんに伝え切れていないと思う。
「…………あーもぅ…」
自分が嫌になる。
自責を続け、落胆して天井を眺めると…。
「…………………『あーもぅ』は……こっちのセリフだから…」
「っ!?」
突然の声に心臓が大きく鳴り響く。驚いて横を向くと、ムスッとした表情でいるのんちゃんの鋭い視線と目があった。
「……ものすごく念入りに準備して………緊張してきたのに…………駆くん…気持ち良さそうに寝てるんだもん。…なんか、ハラハラしてたのは私だけかってショックだった。」
まだ寝ぼけているような声。そして睨みつけていた瞳は、眠たそうなそれに変わっていた。
「明日は…?」
そんなのんちゃんに問いかける。
「もう…なんか嫌。」
「何が嫌?」
「……んー…」
かなり深く眠っていたのか、頭が回っていないのんちゃん。
「………私ばっかり…駆くんに触れたがってる…」
ゆっくりと瞬きをして、まつ毛がユラユラと上下した。
「……………」
明日はのんちゃんも、俺も休みだ。特に予定はない。
「のんちゃん……ごめん…。」
隣にいるのは、愛しい人。
大切な人。
大事にしたい人。
顔の前で脱力している掌に触れると、のんちゃんと視線が交わった。