風雅堂異談
身を乗り出し、優の答えを待つ川辺。


「冷蔵庫が古いですね。買い替えましょう。」


椅子にひっくり返る川辺。
喫茶店を辞し、自分の店に帰る優。
見送る麗子。
優が背中を向けた瞬間、麗子の瞳がまるで日中の猫の様に瞳孔が細くなる。


『ちっ、やはり結界を張ったか?何者だ?あやつ。』
舌打ちしながら、喫茶店の中に入る麗子。


そんな事があったと知ってか知らずか、自分の店に帰る優。ゆきの意識体は、本来の体に戻っている。


「ただいま。ゆきちゃん。問題解決!楽な仕事やったよ。」

『このお気楽トンボ、これからが大変だぞ。やれやれ、かなり厄介な相手だ。』

ゆきは、少しうんざりしながら欠伸を一つした。


そして、次の日。
川辺が飛び込んでくる。


「えらいこっちゃ、家内が原因不明の病気で入院してしまった。なぁ、何かわし悪い事したんかな?問題解決したんじゃないんかいな?二代目?やっぱおばぁちゃんに連絡取ってよ。」
半泣きである。


「えーっ、う~ん、あっ~…」
はっきりしない優に、ゆきの意識体が飛び込んだ。
途端に、顔付きが変わる。


「わかりました。今夜中にけりを付けます。今夜6時にお宅に伺います。」
< 8 / 32 >

この作品をシェア

pagetop