教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
「さあ、どうぞこちらへ。お疲れさまでございました」
「うん、サンキュ。へえ、なかなかいい感じのとこだね。気に入ったよ」
「お気に召していただけたようで何よりです。レストラン部門のテナントは、副社長の高砂が特に力を入れて厳選しておりますので」
「そうなんだ。さすが高砂先輩だなあ」
ここにいる間、俺はひたすら『エクセレント・ラウンジ』の観察に余念がない。テーブルに文献は置いてあるが、正直コーヒーの味さえよくわからなかった。
にもかかわらず入ってきた二人組に注意が向いたのは、彼らの会話に敬ちゃんの名前が出てきたからだった。
ひとりは黒っぽいスーツ姿の若い男で、胸元に高砂百貨店のピンブローチを光らせていて、物腰や口調から外商の社員だろうと思った。
もうひとりは濃い黄色のシャツに青い幾何学模様のパンツという、ちょっと引いてしまうくらい派手な格好だ。背が高く、短い髪はやけにクルクルしている。
だが、ここしばらく敬ちゃんに服装チェックをされているせいか、その男がいわゆる「おしゃれ上級者」らしいことはわかった。
たぶん似合っているのだ、俺には判断できないが……。
つまり、こっちは大切なお客様というわけだ。
とはいえ、俺はそれ以上聞き耳をたてるつもりはなかった。うっかりして亜美の出入りを見逃したらまずい。ところが――、
「できる人だったよ、昔から高砂先輩は」
「高砂とはどちらでご一緒に?」
「大学。同じデニスサークルだったんだよね」
「うん、サンキュ。へえ、なかなかいい感じのとこだね。気に入ったよ」
「お気に召していただけたようで何よりです。レストラン部門のテナントは、副社長の高砂が特に力を入れて厳選しておりますので」
「そうなんだ。さすが高砂先輩だなあ」
ここにいる間、俺はひたすら『エクセレント・ラウンジ』の観察に余念がない。テーブルに文献は置いてあるが、正直コーヒーの味さえよくわからなかった。
にもかかわらず入ってきた二人組に注意が向いたのは、彼らの会話に敬ちゃんの名前が出てきたからだった。
ひとりは黒っぽいスーツ姿の若い男で、胸元に高砂百貨店のピンブローチを光らせていて、物腰や口調から外商の社員だろうと思った。
もうひとりは濃い黄色のシャツに青い幾何学模様のパンツという、ちょっと引いてしまうくらい派手な格好だ。背が高く、短い髪はやけにクルクルしている。
だが、ここしばらく敬ちゃんに服装チェックをされているせいか、その男がいわゆる「おしゃれ上級者」らしいことはわかった。
たぶん似合っているのだ、俺には判断できないが……。
つまり、こっちは大切なお客様というわけだ。
とはいえ、俺はそれ以上聞き耳をたてるつもりはなかった。うっかりして亜美の出入りを見逃したらまずい。ところが――、
「できる人だったよ、昔から高砂先輩は」
「高砂とはどちらでご一緒に?」
「大学。同じデニスサークルだったんだよね」