教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
「……敬ちゃん」
「何だ?」
「悪かったな」
「今さらだ」

 思いきり迷惑そうに眉をひそめてから、敬ちゃんは亜美の方を向いて優しく声をかけた。

「大丈夫か、桐島?」
「は、はい。ありがとうございます、副社長」
「それならよかった」
「ご迷惑をおかけしてしまい、本当に申しわけありませんでした」

 亜美は明らかに安心したようで、顔はまだ青ざめているものの、笑みを浮かべていた。

「いいんだ。気にするな。実は外商の矢野がなんだか気になる客がいると、連絡してくれてね」
「そうなんですか。矢野くんが――」

 互いに信頼し合っているらしく、亜美と敬ちゃんの間に流れる空気は親密で柔らかい。それと恋愛は別ものだと理解していても、ひとりだけ置いてきぼりをくっているようで、俺は下を向かずにいられなかった。
 それに亜美を助けたかったのに、実際には彼女を困らせただけで、事態を収拾したのは敬ちゃんだ。

(――ったく、ばかみたいだ)

 その時、俯く俺の耳に実に楽しそうな笑い声が聞こえてきた。

「ところで桐島、なんだかいじけて、しかも妙な嫉妬をして、勝手にたそがれているヤツがいるみたいなんだが」
「敬ちゃん、そんな言い方――」

 思わず顔を上げ、俺はそのまま動けなくなった。すぐ前に亜美が膝をついていたのだ。

「本当にありがとうございます、林太郎さん」

 そっと両手を握られて、次の瞬間、頭が真っ白になった。

「あ、亜美――」
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