教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
(どういうこと?)

 私は思わず隣にいる林太郎さんを見上げる。

 すると彼は片目をつぶって、「俺にも多少はコネがある」と笑ってみせた。

 以前の林太郎さんだったら絶対にしそうもない仕草。
 それなのに今はそんな表情が似合い過ぎるくらい似合っていて、私は彼から目が離せなくなってしまう。

「どうした?」
「驚きました。とてもすてきだから」

 ほとんど反射的に言葉がこぼれた。考える暇もなかった。

 今日の林太郎さんのスーツは落ち着いたブルーグレーで、細いヘアラインストライプが入っている。形はラインがきれいな三つボタンのシンググルブレスト。

 シャツは白のシーアイランドコットン製で、タイは薄紫の小さなドット柄。
 靴は履きやすいと評判のイギリス製のストレートチップだ。

 ちょっとだけ色で遊んだ好感度が高いコーディネートだが、彼の場合はとてもセクシーに見える。
 もうどこから見ても、一流企業の若きエグゼクティブだ。それなのに、

「ありがとう。亜美さんも……すてきだ、すごく」

 頬を赤らめながらそう返され、私も顔が熱くなった。

「いやあ、まったくお似合いのカップルですな」

 マッシモさんの笑い声が聞こえて、私たちは思わず顔を見合わせた。
 お互いに見惚れ合って、彼の存在をすっかり忘れていたのだ。

「……すみません」
「それではご案内を始めてよろしいですか?」
「は、はい。よろしくお願いいたします」

 私と林太郎さんはどちらからともなく手をつなぎ、マッシモさんの後に続いた。
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