教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
 ――この世で一番美しいところだよ、アミ。そこに行けば、必ず幸福になれる。天国まで届きそうなほど心が躍るんだ。

 遠い昔、父のテイラーでイタリアの優しい紳士から聞いた言葉は真実だった。

 広大なフェリチタ庭園には大きな池や中世の屋敷跡があり、足を踏み入れる場所によって趣がまったく違う。

「ここにはかつて小さな村があったのですが、はやり病で人がいなくなってしまい、領主だった貴族がその跡に少しずつ手を入れて――」

 マッシモさんは林太郎さんには英語で、私にはイタリア語で、植物や庭園形式の説明をしてくれた。

 門から少し歩くと、澄んだせせらぎが流れ、ゆるやかな坂道になっている。
 そこからイギリス風の自然な景色が広がり、その先には薔薇のアーチがあって、ロココ調の優雅な花園を楽しむことができた。
 さらに竹が生い茂る中国風の場所もあれば、岩や苔を生かした日本の京都を思わせる庭もある。

 そんな一見バラバラなモチーフをうまくつないでいるのは、いくつも設えられた大理石の噴水だった。
 小鳥やリス、ウサギ、狐、そしてユニコーン――大小さまざまな動物の像をあしらい、あちこちで水しぶきがきらめいている。

「本当にきれいなところ」
「そうだな」

 歩いているのは私たち三人だけなので、まるで夢の中に迷い込んだような気がした。
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