教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
 私はずっとあこがれていた場所を、林太郎さんと一緒に歩いている。
 それも心地よい風に吹かれ、手をつないで、仲よくおしゃべりしながら。

 ついさっきまではやり場のない感情を持てあまして、ため息ばかりついていた。同僚のロザンナたちにも心配されていた。

 けれど今はフェリチテ庭園の景観に酔いしれながら、彼の隣にいられることに胸をときめかせている。

(お見合いを……断ったって言ってた)

 さっきは唐突過ぎて流してしまったが、あれは本当のことだったのだろうか?
 
 だが、改めて彼に確認するのは怖かった。

 林太郎さんは現にここにいてくれる。
 それでも聞き違いや誤解ということだってあり得なくはない。だからこれから先のことも考えたくなかった。

 私は夢見心地でいられる今を、とにかく失いたくなかったのだ。

(そんなに……林太郎さんが好きだったんだ)

 そう、本当は気づいていた。

 私はいつの間にか彼が好きになっていた。
 こうして一緒にいても、二人の未来を思い描くことをためらってしまうくらい本気で。
 胸が苦しくてたまらないくらい真剣に。

 手をつないで歩きながら、そっとため息をついた時だ。

「さあ、着きましたよ」

 マッシモさんが大きなオリーブの木の下で足を止め、私たちに笑いかけた。
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