教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
「そろそろ喉が渇いたでしょ? お二人はここで少し休憩なさってください。私は後ほどまた来ますから、どうぞごゆっくり」

 濃い緑の葉陰には、小さなテーブルと折り畳み式の椅子が二脚置かれていた。
 テーブルの上にはワインクーラーに入れられた白ワインとグラスがあり、簡単なオードブルまで添えられている。

 本当に特別な場所であるフェリチタ庭園で、まさかこんなサービスが受けられるなんて――。

 マッシモさんが行ってしまうと、林太郎さんは私のために椅子を引いてくれた。

「座って、亜美さん」
「は、はい」

 答える声は少しかすれていた。

 いったいお見合いはどうなったのか、なぜ私たちはこんなふうにフェリチタ庭園で過ごせるのか――彼に訊ねたいことが喉元までせり上がってくるけれど、私はやはりそれを言葉にできない。

 一方の林太郎さんは器用にワインを開けると、私のグラスに注いでくれた。初めて会った時はそんなことができるようには全然見えなかったのに。

 乾杯のためにグラスを掲げる仕草さえ別人のようだ。

「君に礼がしたかった。だからここに来られるように動いた」
「でも私は何も――」
「亜美さんのおかげなんだ」
「えっ?」
「君のおかげで、俺の視界に光が差し込んだ。急に、研究以外のいろいろなものが目に入ってきたんだ、子どものころみたいに」
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