教育的(仮)結婚~残念御曹司(?)のスパダリ育成プロジェクト~
 林太郎さんはテーブルにグラスを置くと、私をまっすぐに見つめてきた。

「さっきも言ったが、見合いは断った。そうするべきだと思ったから」
「でも林太郎さん――」

 ふと影が差したかと思うと、唇にそっと柔らかいぬくもりが触れた。

 瞬間、私の身体が小さく跳ね上がる。

「ん」

 ほんの一秒にも満たないキス――何も反応できずにいるうちに、林太郎さんの唇はすぐに離れていった。

「ごめん」
「ごめんって……どうして?」

 思わず問い返すと、林太郎さんはたちまち真っ赤になった。

「節度を……守れなかった。どうしてもキスしたくて」

 そういえば私の家に来る前にそんなことを言っていたような気がする。あの時はまさかこんなことになるなんて思いもしなかったけれど。

「あ、謝らないでください」
「しかし」

 自分でも信じられなかった。もともとの人見知りに加えて、大学時代の事件以来、私は男性とうまくつき合うことができなくなってしまった。

 今まで何度かキスをしたこともあるが、いつだってただ困惑して怯えていたのに――。

「うれしかった……ですから」
「亜美さん」

 彼の左手が持ったままだった私のグラスを置かせ、右手が体を引き寄せる。

「君が好きだ」
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