俺の気持ちに気づけよ、バーカ!


「俺、先に
 グラウンドに戻ってるわ」


駆けていく
桜牙コーチの背中を
見つめる私。


ほとんど見えなくなって

私も戻ろうっと。

そう思って歩き出した時

桜牙コーチが
私の方に駆け戻ってきた。

全力疾走で。


私の前に来たかと思うと

膝に両手を置き、
うつむきながら
荒い息を整えている。


「忘れ物か何かですか?」

「まぁ~、そうだな」


でもお互い

何も持たずに
体育館裏に来たような……


「璃奈に言い忘れたって方が
 正しいか」

「えっ?」

なんの話ですか?

体を起こした桜牙コーチ。


瞳にかかる波打つ前髪を
荒くかき分け

意志のこもった瞳を
まっすぐ
私に突き刺してくるから

凛とした色気に惑わされ、
私の心拍が急上昇。


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