私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
「俺、天文部に入ろうと思ってるんだ」

「天文部?」

「人数は少ないけど、楽しそうだよ。
来月は、学校に許可をもらって、夜通し天体観測をするんだって」

「いいなぁ。夜の学校なんて、なかなか入れないよね」


それこそ漫画みたいなシチュエーションで、憧れる。


「……よければ、深月も一緒に入らない?」

「え?」

「先輩たち、困ってるみたいなんだ。
部員が少ないから、部費がなかなか増えないって。
天体関係の本が、結構高いらしくてさ」

「そうなんだ……」

「……それに、深月が入ってくれたら、俺も嬉しい」


笑ってそう告げる優星くんに、私の心が揺れる。

今まで部活に入っていなかったのは、勉強と小説を両立させるためだ。

でも……。

しばらく、烈華様が出てくる小説は、書ける気がしなかった。


「……考えてみるね」


私がそう言うと、優星くんは嬉しそうに笑った。


これは、世界を広げるチャンスかもしれない。

新しいことを始めて、それに没頭すれば、烈華様が死んだ悲しみも、きっと紛らわすことができる。


(……いっそ)


いっそこのまま、サイトも消して、烈華様のことを忘れてしまえば────


そんな風にすら、私は思っていた。

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