優しくない同期の甘いささやき
大丈夫かな……私は今、笑顔で祝福できているかな……。

キリキリと胃が痛み出した。

熊野からの視線を感じる。彼はきっと、私の心を見透かしているだろう。

心にもないことを言ってと……思っているに違いない。

その後の私は、黒瀬さんと熊野の会話に相づちを打つことしかできなかった。内容は、全く頭に入らず、何を話していたのか覚えていない。

先に帰っていく黒瀬さんを見送ってから、ため息をついた。熊野はビールとお茶漬けを追加した。


「悲壮感が漂っているぞ」

「あたりまえよ、悲しい……」

「でもまあ、これを機に諦められるだろ?」

「ん……」


肯定も否定もしない微妙な返事をする。諦めるか……何度も考えたことだ。でも、想いを伝えなければ迷惑にならないと想い続けていた。

けれど、今回はかなりキツイ。

子供は黒瀬さんにとって、大きな存在となり、奥さんのことも一層大事にするだろう。

優しい旦那さん、優しいお父さんになるのが想像できる。黒瀬さんの優しさを無条件に得られるのは家族だ。

羨ましいな。


「優しくしてくれなくてもいい」

「は? なに言ってるんだ?」
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