優しくない同期の甘いささやき
瞬きを数回して、黒瀬さんを見つめた。彼も私を見ていて、絡み合う視線に心臓が爆発しそうだ。

ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ……どうしよう!


「また急で悪いんだけど、今夜空いてたら付き合ってくれない?」

「こ、今夜ですか?」


心臓が大暴れしているときに思いがけないお誘いをされて、声が上擦った。黒瀬さんは微かに頷いた。


「空いています! お付き合いします!」

「相変わらず、元気がいいな」


黒瀬さんがクスクスと楽しそうに笑うから、私の頬は熱くなる。その笑顔、最高なんですけど……。

そんな中でふと冷静に考える自分もいた。なぜここであの男を思い出すのだか……。

意地悪そうに邪魔する顔が浮かんでいた。


「もしかして……また熊野も一緒でしょうか?」


こういう時にタイミング悪く現れる熊野の姿を気にして、ドアの方へと顔を向ける。ドアは閉められていて、開く気配がない。

ホッとしつつも、あとで誘うのかもしれないと黒瀬さんを窺う。


「いや。今夜は加納ちゃんとふたりがいいんだけど、俺とふたりじゃイヤかな?」


私は、ブンブンと顔を横に何度も振った。ちょっと首が痛い……。
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