優しくない同期の甘いささやき
目力の強い熊野の睨みは、迫力がある。これをクールでかっこいいと思う人もいるようだが、私には人相の悪いヤツに見える。


「吐けよ。俺に隠し事をするな」


何様のつもりなんだろう……どうして熊野に何でも話さないといけないことになっているのか……。


「言わない」

「は?」


案の定、熊野はますます不機嫌になった。今夜は邪魔されたくないから、絶対言わない。


「どんな予定だろうと、熊野には関係ないから」

「ふざけるなよ。なら、加納のあとを付けるからな」

「ちょっと! それストーカーだからね」

「ああ、優秀なストーカーになってやる。覚悟しとけよ」

「やめてよ……」


誇らしげに言う熊野に、私は顔をしかめた。

優秀なストーカー? どういう宣言なのよ?

頭が痛くなってくる。


「マジでやめてよ、絶対付いてこないで」

「さあな」


念押しして、やっと熊野は私のもとから離れてくれたが、不安になった。熊野の返しが曖昧な感じだったからだ。

気付かれないよう、こそこそと外に出なければならない。
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