8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
 それから一時間半後、オスニエルはジャネットの部屋の扉をノックした。エスコートする男が、相手の部屋まで迎えに行くのはマナーなのでやむを得ずだが、フィオナが知ったら憤るのだろうかなどと考える。

(いや、ないか。そんなやきもちを焼かれたことなどなかったな……)

 冷静になり、真顔になるとともに、少しばかり寂しい気分になる。
 そもそも、フィオナと自分の愛情を秤にかけることができるなら、絶対に自分のほうが重いと、オスニエルは思っている。
 オスニエルが強気で迫れば、『愛している』とは言ってくれるが、フィオナはあまり自分の気持ちを押し付けてこない。
 普段も、侍女や子供たちと楽しく過ごしているようで、オスニエルが来るのを待ちかまえているというわけでもなさそうだ。とくにいなくて寂しがられた覚えはない。

(……かまってこない女が楽だと思っていた時期もあったのだがな)

 自分のほうが寂しいと思う日が来るとは思わなかった。

「はあ」

 ため息が止まらない。こうして離れていると妙に不安になってしまう。
 前にドルフが言った、『お前がフィオナを殺したのに』という言葉。オスニエルは、あれがずっと引っかかっている。彼女が過ごしたという七回ものループ人生。直接あるいは間接的に彼女を死に追いやったのは、ほかでもないオスニエルだというのだ。
 ドルフが嘘をつく必要性はないので本当なのだろうが、だったらどうして、彼女は自分を愛してくれたのだろう。自分を殺した男など、恐ろしくて近づきたくもないだろうに。
 考えれば考えるほど、オスニエルは自信がなくなってくる。フィオナが、本当に自分のことを許し、愛してくれているのかが、わからないのだ。
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