月夜に笑った悪魔 SS
いろんなところに目を泳がせつつ洗って、ふと彼の目の前にある鏡を見た時に……ふと鏡越しに合った視線。
お風呂場は温かくて少し鏡は曇っていたけど、彼の表情はわかった。
……笑ってる。
暁は、口角を上げて楽しそうに笑ってる。
なんだ、その顔は。
なんでそんなに余裕なんだ。
私はほんの少しの余裕もないのに……!
わざとすぐに視線を逸らして洗って、洗うのに集中しているフリ。
でも鏡が気になってまたそっちに目を向けてみれば、また視線が合った。
まだ、私のことを見てた。
しかも笑いながら。
「な、なに」
小さく聞く。
からかわれそうな気がして平静を装って聞いたつもりだった。
でも、それは……
「顔赤くてかわいーなって」
ひと言で簡単に崩される。
言われたことが恥ずかしくて、嬉しくて、いろんな感情が混ざって、なんて返したらいいのかわからない。