メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~
「晴夏さん、また来てくださいね」
「うん。今日は嫌な態度取っちゃってごめんね」
根っから素直な晴夏は謝るときも潔い。
「ヤマダさんいい人ですよ。何があったかのかはわかりませんが、仲直りできるといいですね」
笑いながら言う灯里に、晴夏は困ったような顔で「灯里ちゃん、本当にごめんね」と呟いた。
今西と晴夏を見送った後、灯里はヤマダの表情を探ってみた。
晴夏は最後までヤマダの方を見なかった。根深い何かがあるのだろうが、身内ならともかく他人にあそこまで嫌われるとなかなか堪える。
「ヤマダさん、大丈夫ですか?」
「いや。俺が悪いんだ」
えらく嫌われてましたね、と笑ってみせると、ヤマダは苦笑いのまま首を振った。
二人並んでヤマダの車に向かって歩き出す。今日は今西も車で来ていたので、大和の家の前の駐車場に一台置かせてもらっていた。ほんの数メートルだがいつもより車の位置が遠い。
今日初めての二人の時間だ。見送りはいつも寂しいが、今日はいつもより数十歩だけ長いし。
灯里の心は弾んだが、ヤマダはいつになく硬い表情をしていた。
車の前まで来ると、ヤマダは立ち止まった。口を開いたり閉じたりし、何か言いたげにしていたが、最後に覚悟を決めたように灯里の方を見た。
「灯里ちゃん、話したいことがあるんだ」