メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~

灯里は流れる川をボーっと見ていた。

周囲に人影はなく、川のせせらぎしか聞こえない。ここは人里離れた場所なのかというとそうではない。この川は人家の庭を横切って流れている川なのだ。

庭に大きな池やプールがあるお金持ちは聞いたことがあるけど、川が流れている家はどれくらいあるのだろう。

灯里は疑問に思ったが、そんな話は聞いたことがない。しかも、この川には蛍が群生している。夏場にそれを見た時には、驚きの余り声も出なかった。

庭の川で蛍を育てる家。
まさに、贅沢ここに極まれり。

真のお金持ちというのはこういうものなのね、と灯里は感心したのだ。

灯里は今、京都の貴船にいる。

安西が意識を回復したと聞いたあの日、どこに行こうかと迷っていた灯里の前に現れたのは、安西の祖父厳太郎だった。


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