メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~
*半年前*
『え!?おじい様?』
インターフォンのカメラには厳太郎のアップが映し出されている。灯里は返事も早々に玄関に走り、急いで扉を開けた。
『灯里ちゃん、久しぶりやな!元気にしてるか?』
『おじい様、どうして…』
『京都に遊びに来てって言うたのになかなか来んから、わしが来たがな』
前と同じように黒いサングラスをスチャッと外して、胸ポケットに収める。厳太郎は相変わらず、カッコイイおじい様だった。
厳太郎の横にはキリッとした女の人が立っていて、『はじめまして、藤島葵です。私は、陽大と晴夏の従姉妹なのよ』とハキハキ挨拶をした。
まさかもう一度厳太郎に会えるとは。
多忙な厳太郎が、わざわざこんなところにまで足を運んでくれたことを素直に嬉しいと思う。
『おじい様、また会えてうれしいです。葵さん、はじめまして。灯里と申します』
灯里は二人を笑顔で招き入れた。
厳太郎はキョロキョロしながら、家の奥に入っていく。
『おじいちゃん、失礼でしょ』
葵さんにたしなめられても、厳太郎は扉の立て付けや、床の軋み具合などを確認しながら進んだ。
『ここが灯里ちゃんの最後の家か。最後ぐらいもっといい家を用意すればいいのに、陽大はけち臭いやつやな』
灯里が驚いて厳太郎を見ると、厳太郎は胸を張って自慢げに言った。
『わしを見くびってもろたら困る。陽大との結婚は偽装やったんやろ?しかも三年間の期限付きでまもなく契約が切れる。だからここが最後の家や。そうやな?』
厳太郎は偽装結婚のことを知っていたのだ。
灯里はガバッと頭を下げ、震える声で言った。
『おじい様、騙すようなことをして申し訳ございません。わたし、あの、わたし…』
『わかってる。陽大が言い出したことやろ。最初からおかしいと思とった。結婚相手なんておらんと言うてたのに、いきなり結婚するって言い出したからな。これは絶対なんかあると思って晴夏を問い詰めたらすぐポロリや。あの子は隠し事ができひん子やから』
ハハハと厳太郎は豪快に笑った。
『偽装結婚なんてするおなごは、どんなけしからん子かと思ったが、晴夏はええ子やと言う。だから自分で確かめるために、四国に行ったんや。そしたら、晴夏が言う通りやった。灯里ちゃんが、お金欲しさで偽装結婚に協力したんじゃないってことはようわかったで』
頭をあげなさい、と厳太郎は優しく言った。