契約結婚のススメ
 少なくとも一貴さんの命に別条はないのだろう。

『ただ、倒れたのはやはり専務でした。まだ詳しくはわかりませんが、過労ではないかと。申し訳ございません、私共がついていながら』

「いえ、そんな」

 過労?
 父も最初はそうだった。ただの過労だから心配ないって。

『念のため、あちらに向かおうと思うのですが』

「私も連れて行ってください!」

 考える前に咄嗟に口から出た。


 森下さんがチケットの手配をしてくれて、レジデンスまで迎えに来てくれることになった。

 ほどなくして義母が呼んだタクシーが到着し、私は義母に付き添われながら玄関を出た。と、その時。

 別のタクシーが止まり、人が降りてきた。

 えっ、あ、あの女性は……。

「こんにちは」

 柳美加だ。

「あら、おでかけですか?」

 変装用なのか、かけていたサングラスを外した彼女はにっこりと微笑む。

「ええ、ちょっとね。陽菜、さあ」

「あ、うん」

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