契約結婚のススメ
 義母は運転手に「請求は後で私にお願い」と声をかけている合間に、私は美加に「失礼します」と頭を下げた。

 タクシーに乗ったその時、美加の声が聞こえた。

「LAのお土産を持ってきたの」

 ――LA?

 走りだしたタクシーの中で、心臓が大きな音を立てる。

 LAって。ロサンゼルスだよね。

 美加はスーツケースを持っていた。

 ロサンゼルスから成田まで確か十二時間だったはず。日本に到着してそのままここに来たとして、あの日テレビ電話に映った女性の影が美加だった可能性は十分ある。

 なにしに来たの?

 ロサンゼルスで一貴さんに会っていたの?



 世田谷のレジデンスまで一時間ちょっと。

 タクシーの中から外を見つめながら、あれこれと考えた。

 咄嗟に行くとは言ったものの、私が行ったら一貴さんはどう思うだろう。

 一緒に行こうと誘ってくれたのだから、喜んでくれるかな。それとも今更鬱陶しいと思われる?

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