契約結婚のススメ
「やっぱり。奥様がよく、お嬢さまのお話をされていましたので」

 聞けば母は自慢のお嬢さまだと言っているらしい。優しくて可愛くて。でも結婚してしまったから寂しいって。

 お世辞は話半分に聞き流したけれど、寂しいという言葉は胸に刺さった。あの大きな家でひとり、父を偲んでいたと思うと申し訳なかったと思う。もう少しまめに帰ってあげたらよかった。

「奥様が枇杷亭の女将さんになられたりしないんですか?」

「女将? そういう話があるんですか?」

「私は枇杷亭のほうでもよく使って頂くんですが、ちらほら聞こえてきますよ」

 聞けばどうやら叔父夫婦の評判の悪さが、お客様からも聞こえてくるらしかった。

 でもなぜ義母の名前がでてくるのか。義母は一切店には関わらなかったはずなのに。

「皆さんなぜ、母をそこまで」

「奥様は社交活動をする形で、枇杷亭を支えていらっしゃったそうです。お客様方は皆さん奥様を褒めていらっしゃって」

「そうでしたか」

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