契約結婚のススメ
 すべての準備が終わったころに、秘書の森下さんが迎えに来た。

「お世話になります」

「いえいえ、こちらこそ。道中よろしくお願いします」



 ***



 薄っすら瞼を上げると、白い天井が目に入った。

 壁も白い。ベッドサイドにある点滴の管が俺の左腕に繋がっている。

 そうか、俺は倒れたのか。

「大丈夫ですか」

 ひょっこり顔を覗き込んだのはピーターだ。

「ああ」

 とりあえず体を起こして溜め息をつく。

「今何時だ?」

「九時です」

 え? でも外は明るいぞ?

「丸一日、死んだように寝ていました。睡眠不足に過労だそうです」

「過労?」

 うなずくピーターはしょげたように肩を落としている。

「体力には自信があったのに。参ったな」

 電話に出ようとしていきなり襲ってきた頭痛に顔をしかめた。それが気を失う前の最後の記憶。

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