契約結婚のススメ
「それが聞いてください。ボスが過労で倒れたと正直に言ったら、折れてくれました。契約成立です。さすがボス。」

 はぁ。やれやれ。

「そりゃー倒れたかいがあったな」

「はい。さすがボスです。ただでは倒れない〝溺れる者は藁をもつかむ〟」

 おいピーター。その言葉選びも違うって。

「せっかくだから、もうひと眠りするわ」

「はい。ゆっくり休んで」

 ホッとしたせいか、横になった途端に睡魔に襲われた。


 ん……。

 誰かが俺の右手を握っている。柔らかく慈しむように……。 この手がピーターであるわけないよな、ってゆーか、ピーターだったらゾッとするが。

 そんなことを思いながら瞼を上げて、手の主を見ると。

「陽菜」

「一貴さん、大丈夫?」

 いつからそこにいたのか、陽菜の瞳は泣き腫らした跡がある。

 起き上がって陽菜を抱きしめた。

「心配かけたな。もう大丈夫だ」

「でも、過労は馬鹿にできないから」

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