契約結婚のススメ
 陽菜の父親も、最初は過労で倒れたと聞いている。過労という言葉が、陽菜にとってはなにの慰めにもならないのだろう。

「もう、無理はしないよ」

 体を話して陽菜の頬を両手で包み込む。

「だから心配するな。それより陽菜のほうが俺に心配かけたぞ」

「え?」

 かわいい俺の妻は、不安そうに瞳を揺らす。

「酔って電話をかけてきた日、途中から様子が変だっただろ?」

「そんな……。別に」

 あの日も今のようにごまかした。それが気になって、早く東京に帰ろうと無理をしたんだぞ。なんて言ったらお前はどうする?

 白状するまで問い詰めたいが、それは後にしよう。

「よく来てくれたな。ありがとう」

「来てよかったの?」

 ん? なんだ、その反応は。

「もしかしたら嫌がられるかと思って」

「まさか。うれしいに決まっているだろ?」

 ホッとしたように笑顔になった陽菜にキスをした。

「おじいちゃんが心配だから、すぐ帰るとか言い出すなよ?」

 陽菜はクスクスと笑う。

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