契約結婚のススメ
「なに言っているの」

「嫌だよ、おかあさん」

 こらえていたものが一気に噴き出して、止まらない。

「わかったから落ち着いて。大丈夫よ、大丈夫。私は陽菜の味方だからね」

 泣き疲れるまでずっと、義母は抱きしめてくれた。時には背中を撫でながら、私をあやすようにして。

 おかあさん。私、怖いんだ。

 一貴さんを独り占めしたくて仕方がなくなる自分が怖くて仕方がないの。

 ひとしきり泣いた後、義母は私を離してボックスティッシュを持ってきてくれた。

「ありがとう……」

「とにかくおめでとう、陽菜」

「え?」

 顔を上げると義母はにっこりと微笑んだ。

「まずは赤ちゃん、喜びましょう。そんなに泣いたりしたら、お腹の赤ちゃんがビックリしちゃうわ」

「う、うん」

「ちょうどタンポポ茶があるの。妊娠さんにもよかったはずだから、淹れるわね」

 おかあさん。

 キッチンへ向かう義母の背中に向かって、心ひそかに語りかけた。



 おかあさん、実はね。

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