契約結婚のススメ
「ああ、もう。泣くなよ」

「だって……」

 これが泣かずにいられる?

 一貴さんが私に惹かれていたなんて、嘘みたいで。

「信じてほしい。俺はお前が好きだ。愛している」

「――本当にいいの? 私で」

「ああ。陽菜じゃないと困る」

「怖い女でも?」

「のぞむところだ」

 くすっ。

 嫉妬深くて怖い女の私と、怒ると怖い男の一貴さん。なかなか悪くない組合せかもしれないね。

「私も好き。どうしようもないくらい、一貴さんが好きなの」

「陽菜……」

 熱を帯びた甘い眼差しで見つめられ、頬を包まれた。

 いつものように最初は触れるだけのキス、それから――。

 あっ……。

 一貴さんの手が、パジャマの中に滑り込んでくる。

 ど、どうしよう。

「あ、あのね。激しいのはちょっと」

「ん? やっぱり体調が悪いのか?」

 額に手をあてた一貴さんは、心配そうに今度はおでこをくっつける。

「やっぱり少し熱があるんじゃないのか?」

「えっと、あのね? 病気じゃなくて」

< 199 / 203 >

この作品をシェア

pagetop