契約結婚のススメ

 エビの天ぷらをぱくり。

 口をもぐもぐ動かしながらローマでの出会いを思い出した。

 とっても楽しかったなぁ。

 買い物ついでにスペイン広場へ行って、階段の上からローマを見渡した。トレビの泉では再訪を願うコインを投げて、カフェで食べたジェラートもとってもおいしかった。

 あの時一貴さんは仕事でミラノからローマに来ていて、買い物に来ていたところだったよね。

 海外を股に掛ける海運業か。
 どうりで語学も堪能なはずだ。

 果たしてこの人は、私の計画に乗ってくれるかな。
 偶然の出会いに免じて、私の突拍子もないお願いを聞いてくれるといいんだけれど……。

 本来の目的を改めて思い出し、心がひんやりと冷めていく。

 思い出に浮かれている場合じゃないんだ。
 私にはそんな余裕がない。

「――でしょう?」

「陽菜?」
「あ、ごめんなさい」

 すっかり意識が彼方に飛んでいたらしい。

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