契約結婚のススメ
 私ったらひどいよね。自分の苦しみを彼に投げつけた。彼の良心に訴えて、それでも断るのと罪悪感を植え付けようとしてる。

 でも私は本気なの。なりふり構っていられない。

 祈るような気持ちでお抹茶を飲み干して、空になった茶碗に目を落とした。

「とりあえず、君のいう事情はわかった」

 顔を上げると、彼はうなずいた。

「それで、俺が断ったら?」

 ズキッと心が痛む。

「大丈夫です。そのときは義母にお願いして別の人を紹介してもらいますから」

 断られる覚悟はあった。

 でもいざとなると、やっぱり傷つくし、泣きそうだ。

 これから先、何回こんなお見合いを続けるようになるのかな。

 強くならなきゃ。もっと強く。

 大きく息を吸って顔を上げ、ニッコリと笑みを浮かべた。

「なんだかすみませんでした。無理言って。どうぞ気にしないでください」

 さあ、ダメとわかったから早く帰ろう。

 腰を浮かせたその時「わかった」と彼が言った。

「結婚しよう」

 耳を疑った。

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