契約結婚のススメ
 首を傾げながら、森下は今度こそ廊下へ出ていった。

 一体俺はどういうイメージなんだ。失礼なやつめ。美加との仲は疑ったくせに。

 まぁ本当は森下の読み通りだ。
 枇杷亭を助け、病と戦う父親に陽菜が幸せな新婦の姿を見せるための契約結婚だ。だからこの結婚に愛はない。

 だが俺は陽菜の話に乗った。
 決めたからにはちゃんとするつもりだし、妻として陽菜を大切にしようと思っている。

 恋愛か……。
 そんな感情を持った経験もないし、陽菜が好きで結婚したくて見合いの席に着いたわけじゃないからな。

 ただなぜ〝ヒヨコ〟が見合いなんかするんだと、興味をそそられたから行ってみただけだ。

 どうせ希子さんに言われて来たんだろうし、君から断ってくれないかと言うつもりでいた。

『お願いです。私と結婚してください!』
 それがあんなふうに言われるとは。

 あの勢いだ。俺が断ったら次の見合いで結婚を決めていただろう。

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