契約結婚のススメ
 希子さんは社交界で顔が広い。陽菜が結婚したい理由を知らなくても、資産家の好条件の縁談話しかもってこないだろう。

 陽菜は若く、性格も良くて、その上美人だ。

 経営難だとしても、枇杷亭といえば伝統と格式ある料亭として富裕層ならば誰もが知っている。その箱入り娘となれば、間違いなく引く手あまただ。

『相手が誰でも、そんな条件を出すつもりだったのか?』

 もじもじしながら陽菜は『はい』とうなずいた。

 あの調子で相手に浮気はオッケーですだなんて言おうものなら、どうなることやら。狼の群に迷い込む仔羊だ。その状況をわかっているのかいないのか。

『怖いもの知らずなのか? 無邪気を通り越して向こう見ず過ぎるだろ。先が思いやられるな』

 そう言って笑うと、陽菜はムキになった。

『笑わないでください。真剣なんですから』と頬を膨らませて怒る彼女は、ローマで会った彼女そのままで。

 結局は放っておけなくて、つい話に乗ってしまった。

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