契約結婚のススメ
 まあでも、結婚は勢いが大切だというから、きっとこんなもんなんだろう。

 コンコンとノックの音が鳴り、今度は男性秘書の村上が入ってくる。
「そろそろ出掛けますか?」

「ああ」



 社有車の運転は営業の担当者。

 助手席は営業部長、後部座席に俺と村上。最近はこのメンバーでよく出掛ける。

 皆忙しい身なので、車の中は即席の会議室になる。今日も早速、営業部長が口火を切った。

「専務、ロサンゼルスの倉庫は、やはり移転になりそうですか」
「ああ、その方向で進んでいる」

「ロングビーチに大規模な倉庫か、楽しみですね」
「事業も拡大できますし」

 まったく、皆うれしそうに満面の笑みだ。

 おかげでますます忙しくなる。時差考慮なしのリモート会議で寝不足になるのは目に見えているし、出張も増えるだろう。そう思えば手放しでは喜べないが、南城郵船にとって賢明な選択に違いない。

「そんなわけでまたLAに出張が決まった。行ったついでに片付けてほしい案件があればまとめておいてくれ」

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